賃貸保証会社の特徴
ゆるゆると現実を思い出すのだった。
まだ目を唄っていたけれど、既に頭脳は完全に覚醒した。
ショックというのは効果的なものだ。
大学時代の先輩に、女たらしとして名を馳せたKさんがいた。
そのKさんは、「女性と一緒に暮らすことの最大のメリットは、目覚まし時計がいらないことである」という名言を吐いた。
それを聞いた当時の私には、まったく理解ができなかった。
どうしてだ?女と同棲などしたら、朝寝坊をしてしまうのではないか。
起きられなくなるのではないか。
そうしてしだいにぐうたらな人生になり、どんどん奈落へと落ちていくのだ、というふうに考えていた。
私の友人だったM君は、「きっとその女のために誠実な社会人になろう、という気持ちが芽生えるから、という意味ではないだろうか」という新解釈を語ったが、もちろんM君もそれを実証するまでには至らなかったのである。
寝直すことは不可能だ。
すっかり頭が冴えてしまった。
そのまま寝た振りをしようか、という考えも思い浮かんだものの、そう考えただけでとてつもなく息苦しくなった。
しかたがない、起きる以外に手はないだろう。
あっという間に頭が高速回転し、現状をいかにして打破するのか、という方向へ思考を進めようとしていた。
やはり、目を開けなければ現実的に考えられないような気がしたので、ひとまず目を開けた。
まだ、その顔が同じ位置にあった。
距離にすると七十五センチくらいであろう。
あくまでも推定だ。
つまり手を伸ばせば届く距離、スプーン一杯のスープだって冷めない距離だ。
白い顔に赤い唇。
黒くて大きな瞳。
滑らかな頬。
その顔が、にっこりと微笑んだ。
「おはようございます」彼女の口が動く。
「あ、おはようございます」私も挨拶を返す。
これは、何の合い言葉だっただろうか、と考え彼女はますます微笑み度を増し、その笑顔だけで洗濯物を乾かせそうな勢いだった。
「コーヒーがよろしいですか?それとも紅茶がよろしいですか?」「えっと、あ、じゃあ、コーヒーをお願いします」飛行機に乗っていたわけではない。
ここは私の家である。
彼女は私のすぐ横に膝をついていたのだが、立ち上がって、螺旋階段の方へ歩いていった。
キッチンはその階段を下りた一階になる。
私が寝ている場所からはもちろん見えない。
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